スタジオ・サニーサイド

札幌を拠点に活動する、ゲームのサウンド&シナリオ制作スタジオです

〜ゲームの音をキレイに盛りつけるためには〜 /曲の切り替え編(1)


札幌の春が遠すぎる。こんにちわ。banです。
3月も末なのに気温が氷点下とか。試されすぎる大地。




今回より記事のタグを増やしてみました。
「専門外のためのサウンド講座」というタグにて、
プログラマさんやプランナーさんに知っておいて欲しい、サウンドデータ取りまわしのアレコレを、
引き続き書いて行きたいと思っています。参考になれば幸いです。




えーさて。ゲームの音素材を作るのは我々音屋の仕事です。
イイ音、場面に合った音をいかに作るかが我々の腕の見せ所ですが、
やはり、作った音単体では本来の機能、持ち味を発揮できません。
ゲームという器にキレイに盛りつけられる事で、ようやくその力が十分に活かされます。


サウンドデータが食材のひとつとすれば、ゲームそのものは、いうなれば器です。
見栄え良く美味しそうな料理は、器にも丁寧に盛り付けられているものですが、
サウンドデータも同じで、ゲームという器への盛りつけ方一つで、栄え方が全く変わってきます。
どんなに素材が良くても、見た目が雑なら、それだけで不味そうに見えてしまうのも料理と同じですね。





いや味はいいのかも知れんがこれは…




では、ゲームへサウンドデータを盛り付けるに当たり、
印象良くこれを行うためには、一体どんなところに気を付ければ良いのか。
これから何回かにわたって、そのコツを紹介していきたいと思います。




※ ※ ※ ※ ※ ※



1)曲を止めるときは、フェードアウトで

画面の切り替わりや展開の遷移などで、ゲーム中に曲を切り替える場面は頻繁に存在します。
例えばタイトル画面から、メニュー画面に移行したり、そこからステージ画面に進んだりしたときですね。
この場合、今鳴っている曲をフェードアウトで停止させてから、次の曲を鳴らす、というのが定石です。


この、フェードアウトでフワッと丁寧に曲を止める、というのが肝要で、
これを入れるのと入れないのとでは、受ける印象の良し悪しが全く変ってきます。
カットアウトでブツッと曲を止めて次の曲に、という流れだと、粗雑な感じがするばかりでなく、
曲の再生位置によっては「ブッ」というノイズ発生の原因になるなど、実害も生じます。
料理で例えるなら、前菜のサラダを食べてる途中に突然メインディッシュが飛んできたり、
最後のひとくちを口に入れた瞬間ギャルソンが食後のコーヒーを投げつけてきたり、
と言った感じで、まったくエレガントではありません。


特に、場面切り替えでブラックアウトやホワイトアウトなどの画面処理が入っている場合、
これに合わせて曲もフェードアウトさせるのが常です。
画面にフェードが入っているのに、曲はカットアウトで止まっていると、
音と見た目の不一致が、激しく唐突な感じを引き起こしてしまいます。


もちろん、演出上の必要からあえて曲をカットアウトでバッサリ止めることは、良くあります。
しかしそれはどちらかというとピンポイントで行う特殊な処理で、
「デフォルト挙動はフェードアウト」と考えておいたほうが良いでしょう。
また、あえてカットアウトを行う場合でも、
ノイズの発生を避けるために、ごく短い時間のフェードアウトをかませ、
「あたかもカットアウトしているかのように聴かせる」のが上策だと思います。


また、画面遷移のスピード感や、演出効果を考慮して、
フェードタイムは場面に応じた速さに調整してやる必要があります。
フェードアウト処理を入れた結果、ゲームのテンポが遅くなってしまった、というのでは本末転倒で、
そうならないように気持ち速めのフェードタイムを設定したりして、
快適なテンポで進行するよう調整する必要もあるのですね。




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いかがでしょうか。
単なる曲の切り替えひとつとっても、気持よい流れを作るためには、
実は細かい気配りが必要であることがお分かりいただけるかと思います。
次回は、ジングルを鳴らすときのコツについて書いてみたいと思います。