スタジオ・サニーサイド

札幌を拠点に活動する、ゲームのサウンド&シナリオ制作スタジオです

ゲームの音をキレイに盛りつけるためには/曲の切り替え編(3)

余りに寒くて風邪ひきました。そんなGWまっただ中。こんにちは。banです。




先週の最後に、

というわけで、音の流れを構成する際には、
並べ方だけでなく、音の機能や性質をもかんがみる必要があるのですね。
これは、サウンドの発注をどのように行うか、というプランニングの話にも直結してきます。
その辺りは次回に触れたいと思います。

なんてことを書きましたが、その前に書き漏らしたことがあったので、まずそっちからやります。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





前々回では、曲の止め方(フェードアウト必須!)について、
前回では、ジングルの挟み方について書いてきましたが、
気持ちのよい流れを音の流れを作る上で、気をつけねばならないことはまだあります。


ゲームの音の流れの中で、極力避けたいのが、

「同一曲が、短いスパンで頭から繰り返し呼び出される」

という状態です。
いくつか例を挙げますが、どれも致命的でないとは言え、あまり格好が良くありません。



・例1)ポーズして曲が止まる→ポーズ解除後、曲がまた頭から再生されてしまう。

・例2)アイテムゲットなどで、曲が止まってジングルが鳴ったあと、曲がまた頭から再生されてしまう。

・例3)同一曲が流れる場面Aと場面Bの間を行き来したとき、場面切り替え時に曲が頭に戻ってしまう。



この3つが代表的なケースと言えます。
同じ曲が、一周もしないうちに強制的に頭に戻されるという状態は、
せっかく作った後半部分に再生の機会が回ってこないため、曲の構成を台無しにしてしまいますし、
同じイントロを何度も聞かされることで、聴き手がイライラを覚え、ストレスの原因となることもあります。
また、曲が頭に戻ってしまうことで、ゲームの展開やプレイヤーの気分もまでもが最初に戻ってしまうような錯覚すら発生します。


例1)と例2)を避けるには、ポーズやジングル再生に合わせて、曲も一時停止させ、
ポーズやジングル明けに、一時停止を解除する、という流れにすればオッケー。
(当然フェードタイムの設定は必須です)
コンシューマ機であれば、こうした流れを実現する機能は標準的に備わっているので、
ポーズ時やジングル再生時の処理にそれを用いるだけで、この問題は解決します。


スマートフォンやPCでは、そのあたりの環境はまちまちなのですが、
環境に用意されてない場合は、思い切ってその機能を作ってしまうのがオススメです。
が、「そんな時間はない」「いろいろあってムリ」というような場合は、
曲の音量を一時的にゼロまで下げてしまうことで、曲が一時停止しているように見せかけることができます。
これは次善の策となりますが、曲のイントロがやたらと繰り返されるよりはマシでしょう。




例3)については、曲再生の流れを組み立てるときに、とくにルールを定めず、
場面単位で機械的に曲をアサインすると、こういう状況が発生しがちです。


例えばRPGで、フィールド画面からダンジョン内部を経て、別のフィールドに出る、という流れがあったとします。





画面切り替えを一つの単位として、それぞれに機械的に曲を貼り付けていくと、図1のような状態になります。
この時、ダンジョン内でフロア間移動が発生すると、同じ曲の再呼び出しが起こり、
フロア間を移動するたびに曲が頭に戻されてしまいます。
これを無駄のない流れにするには、下記のような状態にしなければなりません。





図2は「場面が変わっても、流れる曲が同一なら、曲は止めずにそのまま流し続ける」という、
最適化された流れになっております。
この状態を曲遷移のデフォルトとして定めておき、
演出上必要となった時に限って例外を設ける、というやり方が良いでしょう。


ただ、場面転換には、データ読み込みやサウンドドライバのリセットなどを伴う場合があり、
いかなる場合でも継続して曲を鳴らせる、というわけではありません。
仕様上、どうしても曲を止めねばならないこともあります。
そのため、プロジェクト開始時のプランニング時に、
どういうタイミングで曲を止めねばならないかを把握しておき、
それを踏まえて最適な音の流れを作る、というような事前の計画も重要になってきます。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




曲の切り替えに関する、基本的な作法はこんな感じです。
次は、ボイス再生と、それにまつわる「ダッキング」という操作について書いてみたいと思います。