スタジオ・サニーサイド

札幌を拠点に活動する、ゲームのサウンド&シナリオ制作スタジオです

脳内サウンドを鳴らしてみよう

近所の酒屋のお姉ちゃんの声がかわいくて通いそうに。こんにちわ。banです。




今回は音を作るときに、必ず踏んでいるプロセスの話です。


えーゲームのBGMやSEを制作するにあたって、心がけていることは色々とありますが、
「狙い通りのもの」を作るためのメソッドとして、私が特に意識しているのは、
「最初に脳内で曲/音を鳴らしてから、作る」ということです。


つまり、実際に音を形にし始める前に、頭の中で、求める曲や音のイメージを明確にしておくということですね。
このプロセスをすっ飛ばして、とにかく作っちまえ!と手を動かすところから始めると、
自分の場合はあまりよろしい結果になりません。ならんのです。
これは取りも直さず制作の最初の一歩をいきなり試行錯誤から始めてしまうということで、
たとえその結果が形になったとしても、求められる場面に音のイメージが合致しているかどうか、
あるいはクライアントの意向に沿っているかどうかは、完成してみないとなんとも。


これはまあなんというか、目的地に向かうのに毎回矢印付きのサイコロを振っているようなもので、
このやり方でたまたますんなり目的地に着けることも、まあ、無くはないですが、
大抵は微妙にズレた場所に着いたり、気がついたらまるでトンチンカンな場所にいたりで、
そこからまた真の目的地に向かって軌道修正をしなくてはなりません。これはめんどくさい。
この仕事は、とにかく数をこなさなくてはならないことが多いですから、
一つの音を作るのに毎回「♪何が出るかな♪何が出るかな」なんてやってた日にはアッという間に納期が到来です。


となれば、やはり求められる音をいかにロスなく作るべきか、ということが重要になります。
そういう無駄な試行錯誤を避けるために、自分は必ず、
「これから作る曲/音を、一度頭の中で鳴らしてみる」
というプロセスを踏むようにしています。




※画像と本文は関係ありませんが、これはひどい



曲なら、どんな音楽ジャンルで、どんな曲調で、どんなリズムか。
テンポは速いか遅いか、中くらいか。
メロ重視か、リフ重視か。コード進行はどんなパターンか。
アレンジの傾向はどうか。生楽器が主体か、シンセが主体か。
厚く盛ったアレンジか、シンプルでライトなアレンジか。
この曲を聴いた人に、どういう感情を持って欲しいのか。


効果音であれば、この場面で鳴るのは重い音か、軽い音か。
高い音か。低い音か。
楽しげな音か。怖い音か。
繊細な音か。荒々しい音か。
現実的な音か、抽象的な音か。
この音が鳴ることで、ゲームの中に何が起こるのか。


などなど、こうしたイメージをまずは脳内で固めて、脳内で音を鳴らしてみます。
ここで脳内ですんなり音が出て、それが求める音として違和感なさげならOK。だいじょうぶ。
あとは、自分の引き出しから様々な制作メソッドを取り出し、その音の具現化にかかります。
経験上、ここですんなり脳内サウンドが出たものは、そこから実際の音が完成するまでに迷いがなく、速いです。
出来上がったものも、だいたいは狙いを外していないことが多いと思います。たぶん。


しかしまあ、脳内でもなかなか音がまとまらない時というのもあります。
そういうときは、イメージをまとめるための材料が不足していることが多いので、
やみくもに悩むよりも、資料を読み込んだり、クライアント様に質問したり、実際にゲームにさわってみたりして、
イメージを絞り込むための手がかりを少しでも多くインプットするようにしています。
クライアント様に参考曲をもらったり、「あのアニメのあの場面の効果音みたいに」など、
実際に鳴っている音で近いものを指定してもらうことも多いです。


こうしていろいろなインプットを試みていると、
おぼろげにイメージがまとまってきて、脳内で音の「しっぽ」のようなものが見え隠れするようになります。
この「しっぽ」を捕まえるために、実際に少しだけ音を出して試行錯誤することもあります。
鍵盤でコードを弾いてみたり、シンセをいじってみたりして、
脳内にチラリと表れた音の「しっぽ」に近い音を、今度は手で再現してみて、
しっぽの先にある本体の姿をどんどんたぐり寄せていきます。
こうしてイメージがハッキリしたら、またワシワシと音の具現化にかかります。


こんな感じなので、音の作り始めには、DAWをとりあえず立ち上げるものの、机に座っていないことも多いです。
リビングに長々と寝っ転がって、音のイメージが固まるまで目を閉じて脳内で思うさま音をひねり倒したりしています。
あるいは、椅子にふんぞり返って天井をみつめたり、体操したり、散歩に出たり。
ハタからはどう見ても仕事をサボって「働きたくないでござる」というオーラを発している体ですが、
決してそんなことはない。ないのです。ないったら!とこの場をお借りして申し述べておきたい。私からは以上です。