スタジオ・サニーサイド

札幌を拠点に活動する、ゲームのサウンド&シナリオ制作スタジオです

NHK教育に学んでみよう

正直に言うと、塩よりタレの方が好き。こんにちは。banです。




えー何事もモノを作る仕事の場合、アウトプットするためにはインプットも必要でして、
私もゲームの音作りを生業にしている以上、
日々意識してインプットをこれ行おうと努めているわけでございます。
以前は映画を観たりゲームに没頭したり音楽をじっくり聴いたりしておりましたが、
子供が産まれてみるとこれが思いのほか時間を奪っていき、
こういったものに没頭するチャンスがグッと減ってしまいました。


これではいかん。インプットが断たれてはアウトプットが覚束ない。ピンチピンチ。
となると、子供といっしょに観たり聴いたりするものが、
必然的にインプット源になってくるのですね。
例えばテレビ番組とか、DVDとか。童謡とか玩具とか。


しかし子供向けとはいえ侮ることなかれ。
作っているのは幾多の修羅場をくぐり抜けてきた腕利きソルジャーの皆様ですから、
その仕事には隠しようのない匠の業がにじみ出てきており、
以前なら何気なく聴き飛ばしていた音にも様々な創意工夫やノウハウが詰まっていることが聞き取れて、
子供を抱っこしながら感動の嵐が止まらない私でした。


お子さんをお持ちのご家庭なら、高確率でNHK教育テレビにはお世話になっていることと思います。
最近はEテレなんて改称しましたがいまいち馴染みがない。やっぱりここはNHK教育テレビだろ。
いやそれはいいのですが、このNHK教育の音が、音屋としてはいろいろ参考になります。
子供向け番組においては、どういう音楽、どういう音が子供に好まれるか。
どんな音が子供の耳を引くのか。
これを主眼において作られた音が朝っぱらから数時間に渡ってダダ流れになっているのです。
半世紀以上教育ひとすじでやってるのは伊達じゃありません。
いやこれは参考にせんと。受信料も安かねえし。


さらに、オーソドックスなサウンドをメインにしつつも、
隙あらば作り手が遊び心や実験精神を炸裂させ、尖ったものをゲリラ的に仕込んでくるので油断ができません。
それに近年は、視聴者のターゲットとして、子供たち本人のみならずその保護者までも想定しているので、
大人が見ても面白い番組が多いのですね。


「デザインあ」「みいつけた!」「シャキーン!」「ピタゴラスイッチ」「にほんごであそぼ」といった番組群は、
そうした教育装置としてのノウハウと、クリエイターの遊び心が融合して、
音屋としては大変興味深い内容になっております。


シャキーン! お目ざめ界から おっはよ?! [DVD]

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ピタゴラ装置DVDブック1

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にほんごであそぼ たっぷり [DVD]

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こうした番組から学べることとしては、やはり、
「子供の耳を引くために、どのようなサウンドが選ばれているか」
という点に尽きます。
子供がどういうサウンドに興味を持つのか。そして、そもそも飽きっぽい子供の耳をどのようにして引き止めておくのか。
さらに、子供向けということで、難解な要素は極力オミットされますが、
それでいて豊かに、面白く、キャッチーに聴かせようとしたら、どのようなサウンドになるのか、
という問の答えを、まざまざと聞くことができます。


音楽的には、音数の少ないアレンジで、厚みよりも一音一音の役割、存在感に重きが置かれています。
歌モノが多いので自然と口ずさめる曲が多くなりますが、インストものでも、口ずさみ易いメロディが支配的です。
また、短いコーナーが連続する構成上、一曲一曲の尺もコンパクトなのですが、
その中に必要とされる展開が凝縮されています。


効果音の面では、現実音の録音を多用しつつも、
音そのものが面白く感じられる箇所が上手に切りだされており、
音のトリミングがそのまま音のデフォルメに繋がっております。
逆に、音を大幅に加工してデフォルメ、という手法はそれほど見受けられません。
加工してデフォルメするくらいなら、むしろ現実音に擬した音を小道具などで作って、
元々の音からデフォルメしてしまいます。
そして、それが映像の動きに対して、適切に、厳選して配置されています。
同時に複数の音を鳴らす場面は少なく、一音一音を単体で丁寧に聞かせ、
それを連ねて聴かせることで、展開や変化をもたせています。
音のない瞬間、つまり「間」も、効果的に使われています。


大人番組では、過剰なほどに音が詰め込まれている感がありますが、
こういうポリシーで作られた番組の音は、逆に新鮮に聞こえますね。
なお、教育番組では元々この傾向が強いのですが、
対象年齢が低くなるほど、この傾向がさらに顕著になっていきます。


NHK教育の音についてざっと触れてみましたが、その奥深さはまだまだ全然書ききれません。
たぶんそれだけで本が一冊できちゃうレベルかと。
また機会があったら書きたいと思います。私からは以上です。