米飯が美味しすぎてヤバイ。こんにちは。banです。
ゲームサウンドの仕事において、避けて通れないのが音量調整という工程でございます。
ゲームに組み込まれたサウンドに音量のばらつきがあると、
うるさかったり聞こえにくかったり、といった不都合が当然生じます。
そうした実害に加えて、作りこみの雑っつーな感じがどうしても漂いますし、
そのためにせっかく頑張って作った曲や効果音もなんだかイマイチに聴こえてしまい、
ひいてはゲーム全体のクオリティもテキトーな印象になるという、
はなはだ残念な状態に陥ってしまいます。
ですので、音屋としては素材を作る段階からできるだけ音量の凸凹が生じないよう注意を払い、
ゲームに組み込まれた後も、チェックを行なってさらに凸凹をならし…という作業が欠かせません。
このとき、サウンドデータに関わる色々なパラメータをいじるわけですが、
余り知られていない事実の一つに、
「音量を下げるのはカンタンだけど、上げるのはわりと厄介」
というものがあります。今回はこれについて色々書いてみたいと思います。
まず、ゲームサウンドの音量処理についてサラッと触れておくと、
音量に関わるパラメータは、一般的に下の4つに分けられます。
- 1,サウンド素材の音量
- 2.ゲームサウンドデータ内で管理する音量
- 3.ゲームプログラム側から制御する音量
- 4,ゲーム機本体/AV機器などの音量
1)サウンド素材の音量
これは、WAVファイルなどの、素材となるサウンドファイルが最初から持っている音量です。
ここで音量を調整することはもちろん可能なのですが、
一般的にイメージされがちな、気軽に上げ下げできる音量パラメータがファイル内にある訳ではありません。
これについては後でくわしく。
2)ゲームサウンドデータ内で管理する音量
1)のサウンド素材をゲームに組み込む際、
用意された開発環境に、サウンドデータとして登録を行うのですが、その際に与えられる音量パラメータです。
これは、いわゆる音量調整ツマミを、BGMや効果音といった一つ一つの音が独立して持っているという、そういうイメージでだいたいOKです。
さらに内部には様々な箇所に音量パラメータが隠れていたりするのですが、ここでは割愛。
3)ゲームプログラム側から制御する音量
2)で用意されたゲームサウンドデータを、プログラムから呼び出して鳴らす際、ここでさらに音量を制御することもあり、
ゲームを動かしながら、リアルタイムに音量の変化をつけるときなどに使われます。
ボイスが鳴るときに、一時的にBGMのボリュームを下げる、といった処理などが代表例ですね。
また、3Dのゲームでは、プレイヤーの視点からの距離に応じて、
遠くで鳴る音は音量を小さくし、近づくにつれて音量が大きくなる、といった処理も行われます。
4)ゲーム機本体の音量
これは、ゲーム機本体についているボリュームスライダーや、
あるいはテレビやスマートフォンの音量ボタンを指します。
ここの値はユーザーが決めるものなので、作り手側からは制御不可能ですが、
「一般的によく使われるであろう音量」を想定して、
そこで鳴らした時に、小さすぎず、うるさ過ぎずを目標に全体の音量を設定する必要があります。
とまあこういう処理を経て、最終的な音が出てくと思ってください。
音屋としては1)〜4)の全てを考慮にいれながら、音を作っていかなくてはなりません。
4)に関しては、音の出口の大きさを想定することしかできないため、
実際に音屋が制御できるのは、1)〜3)のパラメータということになります。
が、この1)〜3)のパラメータについて余り知られていないのが、
「音量を下げるのはカンタンだけど、上げるのは意外とめんどくさい」
ということなのですね。
まず、2)と3)における、ゲーム内での音量パラメータの扱われ方が関係します。
というのも、ここのパラメータは往々にして「下げる方向にしか動作しない」ことの方が多く、
大元の素材ファイルの音量をがっつり増幅するようなものは、かなり稀だからです。
たとえ音量パラメータに上げ幅が残っていたとしても、
じゃそれをMAXにしたらものすごく音量が上がるのか、と言えば、
それほどでもないことのほうが多い。ぬう。
デジタル音声信号は意外とデリケートでして、不用意に増幅するとすぐ歪んでしまい、
聞くに堪えないノイズを発してしまう、という厄介な性質があります。
このため、デジタルで音声を処理しているうちは、うっかりボリュームを上げられないようにしとこう。
ということなんでしょうかね。やっぱり。
となれば、がっつり音量を上げたいのであれば、元素材をいじるしか手段は残っていません。
じゃ上げたらええやん。WAVファイルの音量を。ガッと。ググっと。
…と思うのが人情ですがそこは話が単純ではなく、
WAVファイルベースで音量を上げるにはまた別の問題がありまして…と長くなったので続きは次回で。