スタジオ・サニーサイド

札幌を拠点に活動する、ゲームのサウンド&シナリオ制作スタジオです

打ち込みとファミコンと高校生と

タイトルは篠原涼子のあの歌のメロで歌うこと。こんにちは。banです。



先週は鍵盤と自分との馴れ初めについて書きましたが、今回は打ち込みとの出会いについて。


今でこそ打ち込みと言えばパソコンでDAWを使って、というのが当たり前ですが、
私が打ち込みという概念を初めて知った80年台後半は、
打ち込みと言えば専用ハードを使うか、シンセ内蔵のものを使うかが主流でした。
パソコン向けのMIDIシーケンスソフトはまだまだ高嶺の花。PC-9800とかの時代です。


高校生当時、すでに自分で曲を作ることへの興味はしんしんだった私ですが、
月の小遣いが三千円という悲しみの事情もあり、これらの高価な機材には手が届かなさ過ぎでした。
が、そんな自分にも気軽に打ち込みが体験できるじゃん!すげえ!と安易に飛びついたのが、
当時売られていたファミコン向けの音楽ソフトだったのです。


まずはコレ。




オトッキー



これは今で言う音ゲーのはしりで、
シューティングゲームをプレイしながら音を奏でるという、斬新なコンセプトのゲームでした。
で、この中にミュージックメーカーというコンストラクション機能があって、
短いながらも本格的なシーケンス機能がついており、
ここで作った曲をバックにゲームをプレイできる、という触れ込みだったのですね。




なんと岩井俊雄氏が開発に関与



このミュージックメーカー部分は、なんと初期状態ではアンロックされておらず、
これを出すためには苦行のように難しいシューティングゲームを気合でクリアしなくてはいけない、
という難点はあるものの、当時のファミコンソフトとしては唯一無二のシーケンス構築環境だったのです。


今の知識でこのミュージックメーカー部分を見てみると、スペック的にはこんな感じ。




しぶい


  • 音源部分はPSG+波形メモリ音源で、4和音+1ノイズの5チャンネル構成。ノイズパートはパーカッションとして利用可。いわゆるファミコン標準の3和音1ノイズ構成でないのは、ディスクシステムの拡張仕様のためか。
  • シーケンス部分は、音源の5チャンネルを個別に制御可能な5トラック構成。
  • トーントラックでは、各トラックごとに音色(矩形波などの波形と、各種エンベロープの組み合わせ)を設定可。トラック4のみ三角波で音色固定。ただしゲートタイムが変更可能。(これはいわゆるファミコンPSGのCチャンネルか)
  • ノイズトラックでは、パーカッションのエンベロープを設定可。音程も指定できるので、バスドラっぽい低い音や、マラカスのような高い音も出せます。
  • 4小節ループ。

 
…こんな感じだったような気が。
うろ覚えで、かつネットにも資料が少ないので、細かいところは違ってるかもしれません。
画面をみる限りでは、各トラックのボリュームもいじれそうですね。
(画面左のオレンジ色のグラフがそれっぽい)



編集インターフェースはかなりそれっぽい感じで、
ノートデータの表記はMML(コンピュータ向けの簡易音楽言語)にも通じるものがあります。
これ、PSGの5ボイスを独立していじれるという点で、かなり素晴らしい環境なのですが、
いかんせん4小節が限度というのはいかにも短すぎ。惜しい。惜しすぎる。


http://www.ustream.tv/recorded/12927589
ネット上に落ちていた、ミュージックメーカーの動画。オトッキーで作った曲を聞くことができます。
結構凝ったことやってる。やるな。ふふ。


いま音を聞くと、いわゆるファミコンっぽいピコピコ音だけではない、
さらにバラエティ多彩な音色を持っている事がわかります。
これはディスクシステムに搭載されていた拡張音源を使用しているためで、
波形メモリ方式を使用した、独特のザラッとした音色が味わい深いです。


自分もこれを買いまして、果てしない忍耐を要求されるシューティング部分を根性でクリアしたあと、
おぼつかない音楽知識で初めて打ち込みをやってみました。
メロディを打ち込んでみたり、リズムパターンを打ち込んでみたり。
洋楽のベースラインを真似しようとしたり。
和声の知識はこの当時皆無だったので、伴奏やハーモニーはかなり適当でしたが、
それでも自分で打ち込んだ曲が、音となり演奏となってアウトプットされるのは、
単純に面白かったし、興奮したものです。


が、やはり短い曲の断片しか作れないため、物足りなさはどうしても否めません。
これ、最低でも長さが8〜16小節、分解能が16分音符だったら、
かなりの神環境として今でも伝説になってたかも知れません。惜しいな〜。


4小節…みじけえ。イントロしか作れんじゃん。
もしくはサビしか出来ないじゃん。
などと、ナマイキにもイッチョマエに物足りなさを覚えていたところ、
その点をクリアした別のソフトが発売されるというではないですか。マジで!?。
と、長くなったので続きは次回にて。